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憲法 [10] 第3章 基本的人権 - 身体的自由権(人身の自由)

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奴隷的拘束からの自由

憲法18条

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

本条は私人間にも直接適用される。

法定手続の保障

憲法31条

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

アメリカ合衆国憲法法の適正な手続(due process of law: デュープロセス)条項の影響を受けたものといわれている。
条文では単に "法律の定める手続による" と規定されているだけだが、手続を定める法律自体が不当な場合には本条の趣旨が全うされないことから、手続の法定に加え、その内容の適正も求められている。
また、本条は罪刑法定主義の根拠条文と解されている。

以上により、憲法31条は、

  1. 手続の適正
  2. 実体規定の適正
  3. 罪刑法定主義

を保障している。

告知と聴聞

告知と聴聞とは、公権力が刑罰や不利益処分を行なう際、当事者に対して予め内容を告知し、弁解・防禦の機会を与えることをいい、適正手続の保障において最も重要な要素と解される。
判例(第三者所有物没収事件 最高裁大法廷 昭和37.11.28)は憲法31条を根拠として、適正手続の保証内容として、告知・聴聞手続の保障を認めている。

行政手続

憲法31条は刑事手続きに関する規定だが、その趣旨が行政手続一般にも準用されないかが問題となる。
その点について判例(成田新法事件 最高裁大法廷 平成4.07.01)は、刑事事件でないとの理由だけでその全てが保障の対象にならないとは判断できないが、行政手続は刑事手続と性質上異なり、その目的に応じて多種多様であるため、処分の相手方に告知、弁解の機会を与えるかどうかは、制限を受ける権利・利益の内容や性質、制限の程度、処分により達成しようとする権利・公益の内容、程度、緊急性等を比較し決定すべきとした。

なお現在では、行政手続法により、不利益処分を行う場合には告知・聴聞の機会が保障されている。

判例】第三者所有物没収事件(最高裁大法廷 昭和37.11.28)

関税法118条1項には、犯罪に関係のある船舶や荷物等が被告人以外の所有物である場合でも没収ができる旨の規定があるが、その第三者に対して告知、弁解、防禦の機会を定めていないため、当該条項によって第三者の所有物を没収することは憲法31条、29条に違反する。

昭和30(あ)2961 関税法違反

判例】成田新法事件(最高裁大法廷 平成4.07.01)

行政手続が刑事手続ではないとの理由だけで、保障の対象から外れるとするのは相当ではないが、両者は性質が異なるため、行政処分に対する告知、防禦の機会を常に与えなければならないとするものでもない。

昭和61(行ツ)11 工作物等使用禁止命令取消等

判例徳島市公安条例事件(最高裁大法廷 昭和50.09.10)

刑罰法規が不明確であるため憲法31条に違反すると判断するかどうかは、一般人の理解において、対象の行為が規定の適用を受けると判断できるかどうかによって決定される。

昭和48(あ)910 集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反

判例青少年保護育成条例最高裁 昭和60.10.23)

条例にある "淫行" という抽象的表現も、限定解釈を加えれば合理的に解釈できるため、同規定は憲法31条に違反しない。

昭和57(あ)621 福岡県青少年保護育成条例違反

逮捕の要件

憲法33条

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

罪状の重い一定の犯罪において、緊急やむを得ない場合に限り、逮捕後すぐに逮捕状の発行を求めることを条件に被疑者を逮捕(緊急逮捕)することは、憲法31条に違反しない。

抑留・拘禁の要件

憲法34条

何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

住居の不可侵

憲法35条

何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

2項
捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

拷問等の禁止

憲法36条

公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

刑事被告人の諸権利

憲法37条

すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

2項
刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

3項
刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

判例】高田事件(最高裁大法廷 昭和47.12.20)

15年余にわたって公判期日が全く開かれなかった場合には、憲法37条1項の保障に反し、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められ、判決で免訴の言い渡しをすべきである。

昭和45(あ)1700 住居侵入、暴力行為等処罰に関する法律違反等

自己に不利益な供述・自白の証拠能力

憲法38条

何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

2項
強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

3項
何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

判例】氏名の黙秘権(最高裁大法廷 昭和32.02.20)

憲法38条1項は、自己が刑事上の責任を問われるおそれがある事項について供述を強要されないことを保障したものであり、氏名は原則として本項における不利益な事実に該当しない。

昭和27(あ)838 威力業務妨害、公務執行妨害、傷害

判例】行政手続への適用(最高裁 昭和42.07.05)

憲法38条の規定は、事実上刑事責任を追求するための資料収集に結びつくのであれば、行政手続にも及ぶ。

昭和46(あ)2738 業務上過失致死傷

判例】呼気検査(最高裁 平成9.01.30)

道交法67条2項に規定する呼気検査は供述を目的とするものではないため、憲法38条1項に違反しない。

平成8(あ)600 道路交通法違反

判例】交通事故の事故報告(最高裁大法廷 昭和37.05.02)

道交法24条1項、同法施行令67条にいう交通事故の報告義務は、刑事責任を問われるおそれのある事故の原因等まで含めた報告を求めているわけではないと解されるため、憲法38条に違反しない。

昭和35(あ)636 重過失致死、道路交通取締法違反

遡及処罰の禁止・一事不再理

憲法39条

第三十九条  何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

判例最高裁判例の法解釈(最高裁 平成8.11.18)

行為当時の最高裁判例に従えば無罪になる行為であっても、判例を変更して、これを処罰することは憲法39条に違反しない。

平成5(あ)694 地方公務員法違反